ACRONYM
1971年 カナダのWinnipegでジャマイカ系中国人の夫婦間に生まれました。建築家の⽗は現在、⾹港在住。母はカナダ在住。弟はLA在住。エロルゾン本人は6ヶ月間ベルリン、残りはU.S.A、Italyを回っています。Toronto Univ.在学中にパートナーのMichaela ( 同志社大学にも在籍していた事もあります ) と出会い、色々な国で暮らしてきた彼女の影響でMunichに1993年から移り住みます。 1994年 Acronym Agencyをスタートし、ARC'TERYXなど様々なブランドの外部デザイナーとしての契約を結びます。とりわけBurtonは12年以上黒子のメインデザイナーとして取り組んでいました。 ※ARC'TERYX VEILANCEファーストシーズンのみAcronym Agencyでデザイン企画を担当。 ※ARC'TERYX ( 代表作 : フロント斜めジップ、“ Arro ” )。 ※Burton ( 代表作 : iPodジャケット )。 1998年 Massimo Ostiから、自身が行ってきた事を次世代に向けて再解釈して欲しいと頼まれ、共にBolognaで数ヶ月仕事をしましたが、結局、新ブランドとしての立ち上げはされませんでした。 1999年 現在の会社を設立し、2002年に最初のコレクションを発表しました。 エロルゾンは、デザイン・生産を担当し、Michaelaは総務・経理を担当しています。ACRONYMという名前は、頭文字 ( 例 : National Aeronautics and Space AdministrationのNASA ) という意味で、ミリタリー、アウトドア、モードなどの要素を持った実験的なコレクションを発表するブランドという意味です。 コレクションは、ミリタリーやアウトドアウエア・ギア要素の機能のレベルを下げる事無く、極限まで洗練させたもので、都会でも違和感を与えないファッションレベルでありながら、厳しい環境に対応可能な最高の " 外出着 " と言えます。 ※エロルゾンがカナダという温度差が激しく、環境が厳しい所で⽣まれ育ったことも理由の一つです。 ⽣産は、当初からチェコの⼩さな工房 ( ACRONYMで所有 ) を年間100%埋めることで妥協の無いもの作りを可能にしています。バッグ類に関しては、当初はドイツ軍のサプライヤーであるKHSで製作していましたが、bagjackと知り合ってからは、全てbagjackでの⽣産となっています。 自身がGORE-TEX社のアドバイザーでもある事から、常に最新の生地を使用しています。GORE-TEXの新素材を使用したACRONYMのサンプルをGORE社が営業用にオーダーし、営業部隊がそのサンプルを持って、他のマウンテニアリング系ブランドに新素材の提案に行くという事です。パンツに関しては、空⼿の師範でもあるエロルゾンが、 " 旋風脚を蹴れるパターン " を基準にするほど、動きやすさを考慮し、全てオリジナルのパターンで製作されています。 ACRONYMの具体的なディティール 1 ) Forcelock : ネオジウム磁石入りのイヤホンを固定しておける取り外し式のタブ ( パテント : 特許 )。 2 ) Jacket Sling : ジャケットを着用しない時にコンパクトに背負える着脱式のストラップ ( パテント : 特許 )。 3 ) Gravity Pocket : ジャケットの袖口から携帯やデジカメを片手で取り出せるポケット。Stocko社 ( YKK Germany社 ) の特殊スナップを使用しています。 ※Stocko社のスナップは、通常針金を用いる部分に高密度のポリマーリングを使用し、ルイヴィトンの " 三世代使い続けても緩まない財布用スナップ " というリクエストに対応した部材です。当初は高価なパーツだった為、Gravity Pocketのみに使用していましたが、今では、ほぼ全てのスナップボタンにStocko社のスナップを使用しています。 4 ) Escape ZIP : YKK社製のパーツ。消防士が熱を持った上着を瞬時に脱ぎ捨てられる様、ワンクリックで全開になるZIP。 5 ) ドローコード : 手袋をはめた手でもドローコードの調整ができるように黒いタブを引くと閉まり、緑のタブを引くと緩む。これは、上記のJacket Slingや、バッグのストラップ類にも共通のルールとして採用されています。 6 ) フード : 一か所のタブを引くだけで、頭部の動きに完全にフィットする仕様になっています。強盗など自分の身が危険になった際に、フードを掴まれたら太刀打ちできない、というセキュリティーの観点からACRONYMのフードは脱着式、もしくは折り畳めるようになっています。 7 ) ホルスターポケット : 人間には、少なからずワキにキャビティがあるので、そのキャビティを応用したポケット。狭い環境 ( 飛行機内、車で座った状態 ) でも簡単にモノが取り出せるように収納ポケットに対して、反対側の腕を交差して使用します。 商品リリースの哲学として、毎シーズン新しいものを生み出すという事よりも、リリース毎に商品のレベルを上げていくポリシーが顕著なブランドです。例えば、ある商品が最初にリリースされた際、1.0 という記号が付いており、シーズン毎に 1.1、1.2 ( マイナーな改善 ) と進み、レベルが別次元に届いた時に2.0と呼称。完成形との判断に至った際に、コレクションから消えていきます。 毎シーズン、機能性は進化し続けていますが、商品の見た目は徐々にシンプルになってきています。この事は、エロルゾンの敬愛するSF作家であるWilliam Gibsonの " インターフェイスは進化すると透明になる " という言葉が、彼のデザイン上のモットーになっているからと考えられます。 20年前に街で携帯電話を持っている人が特異に見えたのが、今、その当時よりも機械としては飛躍的に進化した物を持っているにも関わらず、目にも留まらないという意味で、考えられるあらゆる能力を秘めながらも、だれの印象にも残らない服が彼の理想形です。