AITOR THROUP

1980年 Aitor Throupは、アルゼンチンのブエノスアイレスに生まれます。 1992年 Aitor Throupは、英国のBurnleyという街に移り住みます。この頃から既に、STONE ISLAND、CP COMPANYといったミリタリー、ワークテイストをハイパフォーマンスウエアとして表現するブランドへの憧れを抱いていました。その後、Manchester Metropolitan Universityでファッションデザイン、ロンドンのRoyal College of Artにてメンズファッションデザインを学んだ彼の興味は、ファッションデザインのみならず、ドローイングにも向けられました。 2006年 DIESEL主催による世界的ファッションコンテスト " ITS #5 " でコレクション・オブ・ザ・イヤー、さらにi-Dマガジンのスタイリングアワードも受賞した彼は、その名誉ある二つの賞に加えてLEVI'S、UMBRO、EVISU、The Royal Society of Artが主催するアワードも受賞するという快挙をこの年に成し遂げました。そして、アートディレクター兼スタイリストとして、i-D、Arena Homme、V-MANで活躍する事になりました。 ファッションデザイン面では、イタリアの老舗ブランドSTONE ISLANDと共に " Modular Anatomy " ( 2008年秋冬 )、" Articulated Anatomy " ( 2009年春夏 ) という二つのスペシャルコレクションを発表し、大きな注目を集めました。 2009年 ミラノで行われた " Salone del Mobile " では、C.P. COMPANYとのコラボレートにより、同ブランドのアイコンアイテムであるゴーグルジャケットの20周年記念エディションを発表しました。同年、自身の卒業校である " Royal College of Art " にて自らのキュレーションにより、C.P. COMPANYと製作した新しいゴーグルジャケットのデザインプロセスを見せる展覧会を開催しました。 2010年 ロンドンの " Design Museum " 主催によるデザイナー・オブ・ザ・イヤーにC.P. COMPANYと製作したゴーグルジャケットでノミネートされるまでに成長した彼は、英国フットボールブランド " UMBRO " によるナショナルフットボールチームのアウェー用ユニフォームのデザインを手掛ける事となります。 2010年秋冬シーズンに待望の " Aitor Throup " シグネチャーラインが満を持してスタートしました。 AITOR THROUP FIRST SIGNATURE RETAIL WORK " PRELUDE " ファッションデザイナーというカテゴリーを超越した、独自のクリエーションを持つAITOR THROUP ( アイター・スロープ ) 。彼は、2004年から2010年に渡ってデザインしたトラウザーズの回顧展「Legs」を、2010年1月にパリとロンドンにて開催しました。この際、展示された作品は、現代のファッションデザインにおいてユニークなビジョンを示し、ファッション業界に対して革新的なビジネスモデルを提案するものとして注目を集めました。6年間におよぶ「new object research ( 新しい対象のリサーチ ) 」の結果でもあるこの回顧展は、トラウザーズを単なる商品から独創的な芸術作品へと地位を高め、再評価する事を目的としたものでした。 全身のコーディネートによってブランドのビジョンを伝えようとする現在の主流に対し、「Legs」では自身のアーカイブからセレクトされた24本のトラウザーズと、新たに再解釈を加えた3本のトラウザーズ作品が展示されました。これら3本のトラウザーズは、従来のファッション業界の慣例である年2回のコレクション発表という形式へのアンチテーゼ、試作のコレクションが出来た時点でプロトタイプを発表し、それをアイディアのアーカイブに保存するという、アイディア重視の大胆な手法を取り入れた新しいビジネスコンセプトを提示するものとして展示をしました。 6ヶ月ごとに、そのアイディアのアーカイブから厳選されたデザインは、各シーズンに適した素材やデザインのディテールを新たに用いて再構築されます。このビジネスモデルでは、アーカイブが商業的な生産性の基盤になる一方で純粋な創造性を表現できる環境を促進し、インスピレーションを永続的に提供するアイディアのための土台を作るもの、とスロープ氏は考えています。 アイター・スロープは、独創的なビジネスコンセプトをもとに完成度の高いオリジナルの洋服を作る為、特有のデザインプロセスを採用しています。その手法は非常にユニークで、製作の第一段階は洋服の最終の仕上がりを細かく決めずに、想像上の異なる構造の人物像をイラストとして自由な発想で描くところからスタートします。それが最終目標の方向性をあらかじめ決める物語風のコンセプトに繋がります。下記の異なる、またときにはオーバーラップする4つの規律に準じたこのアプローチ「Justified Design ( 正当化されたデザイン )」はスロープ氏独自の手法です。 < 過去のコレクションテーマと解説 > 1. 概念の機能主義 「Mongolia ( モンゴリア )」コレクションに見られるように、すべての形と機能的要素の目的は物語によって正当化され、同時にこれらがその物語を伝える。 2. 物語調の変形 軍服が神聖な形に進化する「When Football Hooligans Become Hindu Gods ( フーリガンがヒンズー教の神々になる時 )」コレクションでは、デザインの変化はコレクション全体の物語に対応し、またその物語によってデザインの各要素が決定付けられる。 3. アルゴリズム式構造法 「The Funeral of New Orleans ( 二ューオーリンズの葬式 )」では、コレクション全体を通してデザイン要素を決定するためのパラメーターを埋め込んだシステムを構築する。 4. ネガティブ・スペース・デザイン 「Tailoring Concepts ( 仕立てのコンセプト )」では、スロープ氏が描いたイラストのポーズを再現するためにミニチュアのスカルプチャーに洋服を着せ、その全体のスケールを人物のサイズまで拡大させる。 そしてこの「正当化されたデザイン」において、個々のデザイン要素はそれぞれ同等に重要視されています。シャツ、ジャケット、シューズ、またはバッグ、各アイテムのデザインは全てこのプロセスによって決定されます。その結果、プロダクトの外見と同等に内面のプロセスも表現可能な本当の意味で独創的な洋服が生まれます。アイター・スロープによる作品の構造は、デザインのディテールにより一体化しています。下腿部分にユニークなシルエットを構築する足全体を包み込むことも出来る収納可能なフットガード、そしてブランドのシグネチャー的なパンツの後部や肩回りにあるダブルダーツ等はブランド独自のシグネチャー的要素でもあります。全デザインの特徴のように、このダーツのシステムもある特定のコンセプトがもとになっていて、この場合はミニチュア彫刻の研究がそれに当たります。 外見が美しいだけの安易な発想を避け、アーティスティックな主張や経験を追求するアイター・スロープの作品は、プロダクトと同等にプロセスを重視し、クリエーティブの源を説明できるだけの素材が伴っています。単なる商品として認識されがちなものも、より深い理解により、感情と結び付く事が可能なのです。 PRELUDE ( プレリュード ) 「The Funeral of New Orleans」の「トランペット・トラウザーズ」、「When Football Hooligans Become Hindu Gods」の「カーフ・ポケット・トラウザーズ」、そして「Tailoring Concept One」の「アナトミー・トラウザーズ」という過去のコレクションから選ばれた3つの異なるトラウザーズで構成される 「PRELUDE ( プレリュード )」は、次のシーズンのために再考、新たに制作された作品です。回顧展「Legs」で発表されたこれらのトラウザーズは2パターンあり、ひとつ目はフットガードが足を覆い隠すもので、2つ目はフットガードが足首の後ろ部分に収納されるものです。全作品、ハダースフィールドのウール素材と伝統的な鳥目織りが合わされ、シグネチャーのダブルダーツステッチが使われています。 「トランペット・トラウザーズ」と「アナトミー・トラウザーズ」は両作品、手の凝った複雑な構成で立体的に縫製されています。織布ではなく毛皮やレザーを縫うためにデザインされたオールブック&ハッシュフィールド社のミシンを使い、複数のパーツを組み合わせて構築された立体的なシームレス構造の様に見える縫製となっています。 各パーツのファブリックを袋状に膨らませ、二重に重ねた生地に縫製を施した上で裏返し、パッチワークの様に隣接する布のエッジを縫い合わせます。縫い目の回りに余分な生地がだぶつかない構造のため、より立体的で彫刻的なフォルムの構築が可能となります。よってウールなどの通常、裏地としては使用されないラグジュリアスな裏地を用いる事も出来ます。 独自のクリエーションを持つAITOR THROUPの記念すべき初のリテール作品となる「PRELUDE」は世界で5カ国、1カ国1店舗のみで販売される事となり、UKはロンドンのSELFRIDGES、ドイツはベルリンのDARKLANDS、USはニューヨークのSEVEN、ベルギーはアントワープのRA13、日本は東京のELIMINATORが担いました。