ARC'TERYX VEILANCE
現在では当たり前になった止水ジッパーや、熱圧着による無縫製 ( ラミネート ) の仕立てなど、様々な革新的技術を開発してきた、カナダ・バンクーバー発のアウトドアブランドARC'TERYX。世界で最も厳しい基準を持つとされるアメリカ軍に正式採用され、現在も実戦で数々の部隊で使用されているLEAFラインと並び、ARC'TERYXの最高位のプロジェクトとして2009年に誕生した、ARC'TERYXのアーバンファッションレンジがVEILANCEです。 削ぎ落とす事で完成されるミニマルなデザインをコンセプトに、普遍的でありながら革新的な技術や素材を駆使し、究極のアパレルウェアの創造を目指しています。企画、生産をカナダで行い、バンクーバーにある自社工場では、生産ラインを外部から見えないようにパーテーションで仕切り、徹底した生産管理のもと作り出されています。世界でも限られた一部の店舗のみで展開し、アジアでは日本だけの展開です。 ■ARC'TERYXの歴史 1989年 カナダ・バンクーバーにあった、ハーネス製造メーカーであるRock Solid社が原点です。Rock Solid社のハーネスは、そのフィット性の高さや品質の高さから、ローカルクライマー達に愛用され、信頼を勝ち得ていました。多くのクライマー達はRock Solid社に対して、ハーネス以外の製品作りも求めていた程です。 1991年 カナダ・バンクーバーにて、 ARC’TERYX として誕生しました。従来の製法ではハーネスに必然として出来てしまう生地のしわ。そのしわを取り除く為に発明したバックルである “ Shaha buckle “ を、何度も失敗を繰り返しながら、ついに市場には存在しない程のフィット性を生むハーネスとして完成させ、コアなクライマーの間にARC’TERYX製品へのパラダイムシフトを促しました。従来の製品と全く違うコンセプトや製法で創り出すブランドとして認知され始めます。 現在デザイナールームは、本社二階建ての二階全スペースを約20名のデザイナーが思いのままに使用するという環境の中、素材メーカーが持ち込んで来る新素材をデザイナー達がマイクロスコープで吟味し、場合によっては改良を求め共同開発しながら、常に最良の素材を解剖学に基づいた美しいデザインで製品化する、カナダの山岳アウトドアブランドとしてマーケットをリードしています。 ■ブランドコンセプト 「 より快適で、そして楽しく 」。単純ですが、アウトドア活動を心から愛する者達の基本です。デザインを語る上でよく言われる 「 機能美 」 は、開発の結果であり延長線上の形容です。 ■他ブランドにない特徴 ( アークへの道 ) 創造と開発。アークテリクスを定義する言葉です。業界をリードし、一つの規範となる技術的な革命とは、いきなり起こり得る事ではなく、「 evolution in action 」 をテーマに常に進化を求め、前進し続けて始めてなし得る事です。我々は、かつて3D立体構造のハーネス開発を誰よりも先に手掛け、やがてヒップベルト構造へとたどり着きました。止水ジッパーと称されるウォータータイトジッパーの開発、素材のラミネーション開発でも、ソフトシェルという新しいカテゴリーの発展に大きな役割も果たして来ました。シーム幅を狭め、縫製を減らして、美しく耐久性のある製品開発という、従来の古い製造方法や考え方を一切採用しない、それはまさに 「 創造と開発 」 からの道でした。 現在、我々の様々な技術がアウトドアアパレル業界の規範となっています。我々の古い技術を他社が採用して新製品を発表する中、我々はその技術をさらに繰り返し改良し、さらに一つ上の次元の開発技術を製品に反映さています。技術革新のサイクルの先を常に見つめてデザイン開発を行っているのが、我々アークテリクスです。従来の固定化していたデザイン、素材使いを全く無視した我々の新たな創造と開発は、より次元の高いパフォーマンスを提供する製品作りに情熱を傾ける我々の想い、「 evolution in action 」 によって常に突き動かされています。 ■製品開発における基本的な姿勢 防水性や強度を落とす縫製の縫い目を最小限にします ( ラミネート加工、立体裁断、立体モールド熱成型の独自技術の活用 )。 既存の加工技術を一切無視し、素材そのものの研究や構造を新しい着眼点で、独自の加工技術にて開発しています。デザイナーは、固定概念にとらわれる事を嫌い、皆、得意なアウトドアに精通し、ミシンが使えて自分のサンプルをいつでも作れます。 ■主な独自開発の技術 熱成型3次元サーモフォームモールディング加工 ( バッグ背面、ウェストベルト、ショルダーハーネス、クライミングハーネス等に活用 ) 、ウォータータイトジッパーの開発 ( ゴアテックスジャケット、パンツ、バッグ等に活用 ) 、業界最細の縫製シーム幅と13mmタイニーテープの採用 ( ゴアテックスジャケット等に活用 ) 、異素材同士のラミネート加工技術 ( ウェア、パック等に活用 ) 、防水生地の開発 ( バッグ等に活用 )、ソフトシェル素材・高密度ナイロンストレッチ素材の開発、1インチでのステッチカウント ( 業界平均8〜10ステッチに対し14〜16ステッチの細かな縫製 )。 ■新素材開発において共同した有名素材メーカー 米国YKK社、米国Gore社、米国Molden Mills社、東レなど、素材メーカーと共同開発した製造技術は独占せず、業界における製品クォリティーのスタンダード向上に大きな役目を果たしています。 ■飛躍への転機 1992年、アウトドア経験豊かで素材知識に優れたデザイナー、マイク・ブレンカーンは、バンクーバー北部のマウンテントレイルに向かう為の、バイク持ち運び用の快適なオリジナルショルダーヨークを独自に作り出しました。 「 革新 」 を続ける集団ARC'TERYXが、製品として発表する幾多の 「 発明 」 の原点とは、常に如何なる時にも 「 より快適で、楽しく 」 という非常にシンプルなものです。しかしながら、その想いは誰よりも強く、高い次元のものです。この時、デザイナーのマイクによって創り出されモールディング処理された素材が、後のARC'TERYXの初製品となる熱成型レッグループハーネスや、その後のサーモラミネーション製品、技術の革新に大きなインスピレーションと可能性をもたらしました。 人体に正確にフィットする微妙かつ巧妙な曲線、人体へのフォームフィッティングが可能にする道具の快適性と美しさ、ARC'TERYXが独自に研究を始めたサーモラミネーション ( 熱成型技術 ) 開発は、そうした未知なる快適なフィッティングを可能にさせ現在に至ります。しかし、前例のない開発への取り組みは、一つ一つのプロセスで極めて正確なブレンドを必要としました。気温、原材料、熱量と圧力、全ての行程で求められる厳密なその正確性。研究と失敗を繰り返し、到達した高温での異素材の結合とその冷却方法は、Vaporラミネートテクノロジーを生み出しました。この技術が、ハーネス開発に取り込まれ、人体へのフィッティングにおいて解剖学的な見地での、ARC'TERYX製ハーネスへの快適性を実証しました。さらに、その技術は解剖学に基づいたパックのサスペンションシステムに応用され、幾多の賞を受けながら長くアウトドアコミュニティーで高い評価を得ています。 バッグやハーネスの生地素材に、熱や接着剤を使った多くの作業行程と、製品作りを繰り返して来た末に到達したラミネート加工技術の領域。それは、もはや従来の直線的で継ぎ合わされた工業製品作りの為ではなく、より快適でより美しく 「 仕立てる 」 製品作りを可能にさせた、「 ART 」 とも言えるラミネート加工技術の領域です。我々の研究は、さらにアウターウエア上での異なる構造素材の結合と融合を主題に進む中、古くから変わらないウエア作りでの 「 縫製 」 の技術やルールそのものに疑問を抱き始めました。研究の第一歩として、縫製箇所を最小限に仕上げる研究を繰り返す事で、従来の縫製が生み出す生地の 「 重さ 」 と 「 堅さ 」 の最小限化と、耐久性向上の為の縫製処理技術を会得しました。月日を重ねた研究の繰り返しの末に、ついに従来の古い縫製技術では、遙かに及ばない強さと軽さを兼ね備えた素材融合を可能にする、唯一無二の技術的方程式を作り上げる事に成功しました。 今では他メーカーでも目にする、ARC'TERYXでのメジャーなラミネート加工処理箇所 ( ポケット、ドローコードトンネル、パンツゲイター、カフスタブなど含む ) は、このような長い時間と創造的な研究に熱意を惜しまない、我々デザイナー達が生み出したアウトドア市場での大きなロードマップであり、「 より快適で楽しく 」 を期待する全ての人に提案したい技術です。 ■ギア ( ハーネス・バッグ ) からウエア開発への挑戦 我々は、アウターウエアという構造そのものを、全く違う角度からのアプローチによってデザイン開発しています。無駄を排し、機能を高める。優れた機能素材のセレクションと、その素材の組み合わせや他素材との融合が生み出す最大のパフォーマンス。不必要で余分な重さを生む無駄生地を排除し、さらにコンパクト化の為の細部へのデザイン配慮がなされる。そして人体が最大限のパフォーマンスを発揮できる機能性を持ったプロテクション、それが我々のアウターウエアです。 我々は、既にアウターウエアの新しいスタンダードを導き出しましたが、さらに改良を重ね続け、常に我々が求める理想のアウターウエアを現在も研究中です。マイクロスコープでの繊維構造の研究から、新素材の開発。使う場所を選ばず、快適で滑らかなシルエットを有しながら、強度やフィット感において、過去に存在しない程の仕立て・テイラーメイドされたその着心地。13mmタイニーシームテープの採用や止水ジッパー開発、新素材の開発技術やラミネートテクノロジー、デザイン開発などの全ては、我々独自のウエア開発におけるオリジナルの研究が原点です。ウエア開発への挑戦は我々の原点である、Shaha buckleハーネス製造時から、現在に至る研究データと熱意の蓄積が大きな原動力となっています。 ■その他 2004年春より、米国海軍でのバトルパック製造受注コンペにおいて、米国アウトドアブランドGregory社との競争に勝ち、20万個の納品を受注しました ( ベースモデルはBORAでデジタルカモフラージュを施しています )。 これは米国海軍が自国以外の会社に初めて、特別な仕様のパック製作を依頼した事として、アウトドアマーケットでは話題となりました。 また、非公式に米国陸軍に既存の製品であるニーパッド ( 膝あて : 立体的に熱成型されたプロテクションフォーム ) を、数百単位で納品しました。 2005年 ハーネスやウエア、バッグのパーツ製作などで培ってきたラミネート技術の応用をもとに、製造工程の変革をもたらすシリーズAC2 ( Advanced Composite Construction ) を、2005年8月アメリカでのアウトドアリテイラーショウにて発表し、会場内の注目の的となりました。 バッグ本体に取り付けるショルダーやヒップハーネス、ストラップ、コンポーネントにいたる細部のパーツの取り付け箇所は 「 生地の繋ぎ目 」 から、という従来のパック設計の基本を無視した新しい設計で作り出されてます。生地と生地をカットし、縫製で縫い合わせて立体的なパックを作る技術はもはや古く、AC2はラミネーションを多用し、生地に独自のウレタンのラミネーションを施す事で、あらゆるパーツを外生地にダイレクトに溶着する事に成功しています。使用される生地はたった2枚。独自の優れたパターンとラミネーション技術、素材開発の賜物です。理想の生地が無ければ生地を作り出す、樹脂パーツがなければ樹脂パーツを切り抜く機械すら、自分たちで作りだしています。AC2シリーズはバッグカバーを必要とせず、軽量で動き易いバッグとなっています。 2007年 縫製技術とラミネーション技術を駆使し、秋冬シーズンにて1モデル ( Alpha LT Jacket ) に8mmタイニーシームテープを採用した、超軽量3レイヤージャケット ( 365g ) を発表しました。 その他インサレーション技術の面では、繊維一本一本にDWR加工を施し、濡れても水を吸わず、はじき返す独自の中綿素材を開発。ラミネーションを生地裏面に溶着する事で、キルティング加工を必要としない、軽量で柔らかく温かいジャケットが発表されました ( Dually Jacket, Solo Jacket )。 2008年 構造的に革新的な工法を用いたハーネスを発表しました。従来のギアとしての装着感を感じさせない程に薄く、加重分散とサポートを全く新しい方法で改善させました。 2010年 2005年以降、バックパック全体のデザインを大きく変えるため、AC2シリーズにマルチデザインのArrakisシリーズを投入しました。従来のAC2バックパックより、様々なアクティビティに対応。創業当時から作り続けてきたBoraの後継として、素材を何種類も組み合わせ、適材適所に使用し、耐久性を保ちながら軽量化したAltra、Axiosシリーズをトレイルモデルとして発表しました。2010年には、Altra65がBackpacker Magazine's Editor Choice award を受賞しました。