TIGRAN AVETISYAN
TIGRAN AVETISYANはモスクワ出身で、ロンドンのセントラル・セント・マーチンスを2012年に卒業。同校内では数人しか開催する事が許されない卒業コレクションで、LVMH のスポンサー賞を獲得しました。 あるシーズンにおいて、何かに対するアンチや皮肉の比喩などを盛り込みコレクションテーマとしました、という事ではなく、彼は常に軸にアンチが存在し、ウエアを通してメッセージを発信し続けています。その姿はまるで活動家のようです。試行錯誤しながらファッションを通じ自身の考えを発信し、メッセージを伝えたいと戦い続けている姿は非常に美しく、そしてリアルです。故にTIGRAN AVETISYANの作るウエアは、信じられるのです。 現状を単に批判したり嘆いたりする事は簡単です。TIGRANはそこで終わらせず、危険な状態である事に気付いて欲しい、そして明るい未来となれるように皆で意識を変化させていきましょう、という前向きなメッセージを込めています。新しい事を創り出すには、既成のものをポジティブな意味で再考・破壊しなければ新たな価値観は生まれないという、まさにVANDALISM的発想を持ったデザイナーと言えます。コントロールされ、意図して作られた現在のファッション界のメインストリームに対抗する旗手の一人として、注目すべき存在です。 ■STATEMENT OF TIGRAN AVETISYAN これは革命でも進化でもありません。 私たちがこれから語ることは、以前から私たちの目の前にありました。もちろん、これらの事柄に目新しいことは何もありません。 それでも現在皆がどのように見ているのか、どのように見られたいのかを問題としています。しかし、私たちは他の誰かになることを望んではいません。私たちは純粋に、より良い人になりたいだけです。 誠実さとは、私たちにとって悪魔払いのようなものです。 最初のステップとして私たちは誤解し、嘘をついていたことを認めましょう。 美しさ以外に真実はない、という人がいます。しかし、敢えて私はあなたに言います。美の考えは進化のみを歓迎し、衰退することを非難します。そろそろファンタジーの世界への、6ヶ月の旅行を終了する必要があります。年2回の気まぐれを、創造的な意志に帰する余裕は私たちにはありません。 そして同時にデザイナーは、配置したすべてのディテールに根拠を与える必要があります。 ファッションが前進するためには、時間の並行性を受け入れる必要があります。「今」よりも遠くを見る必要があります。 あまりにも長い間、私たちは無意味なシーズン毎の弁証法に、多くの資源と労力を浪費してきました。全てはスタンダードモードなクリエーションの中で、説明することが出来ます。 限られた人々へのリミテッドエディションというリリーススタイルを用いることで、私たちが取る方法論は包括的であり実験を恐れないものとします。 私たちはシーズン毎に新たなアイテムをリリースするのではなく、継続的な開発を目指しています。ストーリーの中では、矛盾、外的な要素による影響、そしてそれに伴う予期しない結果さえも歓迎します。 簡潔であることに理由はありません。しかし、様々な手段を最大限活用することでもたらす、最大の可能性を感じて頂くことを求めます。すべての事柄には言及する価値があります。最も美しいものから最も醜いものまで。 人生は、この世に存在する最大のクローゼットよりもはるかに大きいのです。 ほつれた縫い目と未完成の裾は、我々にとって日常にありえる事柄の範囲内です。 何でも自由に身につけられるということは、知的自由を意味するものではありません。同時に服が簡単に商品化され、便利である必要はないと言っている訳でもありません。 私たちは人間とは深く、挑発的で、超越的である可能性を秘めていると言いたいのです。したがって、私たちは物質性に反対するのではなく、精神面での異議を唱えていきたいと思っています。 これらのアイディアが固まるのは、我々の皮膚感覚だけであると私たちは信じています。 最終的には、趣味、趣向の負担から外れたいと思います。私たちの目標は、完全な透明性をアーカイブして完全に消滅させることです。 私たちは自分自身を完全に表現するまでは止まりません。私たちがすべてを言うまで、これ以上言うことが無くなるまで。