SOFU TESHIGAHARA x ALMOSTBLACK
18.07.2023


RAF SIMONS STUDIOで経験を積んだ中嶋 峻太氏が手掛けるメンズブランドALMOSTBLACK ( オールモストブラック ) の23AWコレクション。

23AWシーズンは、いけばな草月流の創始者であり日本のいけばなを世界に発信した第一人者の「勅使河原 蒼風」( 1900-1979 ) 氏とのコラボレーションアイテムを展開しています。勅使河原 蒼風氏は、いけばなにおいて斬新な手法を多く提供し、フランスのフィガロ誌、米タイム誌等が「花のピカソ」と賞賛した人物です。


勅使河原 蒼風氏は華道家・勅使河原和風の長男として生を受けます。クラシックな「いけばな」というフィールドにおいて才能を発揮し注目されましたが、内容よりも形式を重んじるそれまでの「いけばな」に疑問を持ち、父である勅使河原和風と決裂して1927年東京にて草月流を創流。

しかし、無名の流派には入門者が集まりませんでした。それでもこのような厳しい状況を逆手に取り、D.I.Y.ともいうべき精神で、「器」を錆びた鉄釜などで代用し独創的な「いけばな」を提案。戦後、空前のいけばなブームを巻き起こしました。


草月流家元でありながら、花をいけない・花を用いない、といった新しいいけばなの手法を取り、さらに活動は彫刻、絵画、書、舞台美術まで多岐に渡った芸術家です。
実際、「若しこの世の中に、植物が一つもなかったとしたらどうだろう。どっちを見ても花はない。そういうとき私たちは、一体何をいけるだろう。私は、そこに石があったら石、若しくは土があったら、土をいけるだろう」。というような言葉も残しています。
画家・サルバドール・ダリの自宅に流木のオブジェを制作した事もあります。


写真家の土門拳 ( 22AW、23SSにおいてALMOSTBLACKがコラボレーションした写真家・細江英公氏が活躍する前の時代に活躍した日本を代表する写真家。スーパーリアリズム主義が特徴 ) とは、義兄弟と呼ばれるほど深い信頼関係を築きました。
※23AWのALMOSTBLACKコレクションにおいて、土門拳氏が撮影した勅使河原 蒼風氏の作品をウエアにプリントしています。

以下23AWブランドオフィシャルリリースより抜粋
蒼風は「花が美しいからといって、いけばなのどれもが美しいとは限らない ( ※草月五十則の第一則 ) 」という言葉も残している。これはALMOSTBLACKが継続してきたアーティストとの取り組みにも言い換えることができる。コラボレートするアーティストの作品がいくら美しいからといって、そのコラボレーションが美しいとは限らない。このことは、このブランドのこれまでのコレクションにも通底している意識だった。いかに説得性と正当性をもったコラボレーションなのか。この問いに、中嶋 ( ALMOSTBLACKデザイナー ) はクリエイションで応えてきた。

※前述の草月五十則に関して
アイテムへのプリントやLOOK画像の一部として使用されているワードは、勅使河原 蒼風氏が草月いけばなの心得を五十の規則にまとめた草月五十則からピックアップしています。

第一則 : 花が美しいからといっていけばなのどれもが美しいとは限らない
第二則 : 正しいいけばなは、時代や生活を遊離していない
第三則 : 精神に古今なく、作品は変転自在
第四則 : 一輪、一と枝、の強調。大自然を圧縮したような一瓶
第五則 : 花と語りつついける
第六則 : はじめから結果を心配しすぎぬ稽古
第七則 : 清らかに、静かに、注意深い稽古
第八則 : 役に立つ経験を集めたのが花型法
第九則 : 基本花型法の応用花型法
第十則 : 基本、応用の練習から自由創作は生まれる
第十一則 : 主枝は骨組み、従枝は肉づけ
第十二則 : 安全な順序、盛花から投入へ。真副に木、控に草
第十三則 : 立真、傾真の二基本があらゆる花型の母体
第十四則 : 前後にひろげる第一応用
第十五則 : 主枝の交換が第二応用
第十六則 : 三方正面の第三応用
第十七則 : 副を使わぬ第四応用
第十八則 : 主枝の分裂が第五応用
第十九則 : 四方正面の第六応用
第二十則 : 置く、敷く、浮かべる第七応用
第二十一則 : 花型の併合第八応用
第二十二則 : 上手な人ほど、器前、器後の仕事が入念
第二十三則 : 花は大切にすること、花は惜しまぬこと
第二十四則 : 枝の留め方。葉のうらおもて根元のしまり
第二十五則 : 真、副よりも控を直される
第二十六則 : いける時ほどそばでは眺めない
第二十七則 : 枝数の奇数、偶数より、調子や釣り合い
第二十八則 : 投入にも馴れる、盛花のように
第二十九則 : 無花器の作品や、枯れもの着色ものも研究
第三十則 : 技巧と無技巧。真・行・草と皮・肉・骨
第三十一則 : いけばなは絵だという、音楽でも彫刻でもある
第三十二則 : 青竹の筒や、タネ壷も最高の花器
第三十三則 : 花をいけて美しくなる器をえらべ
第三十四則 : 花と器、そして室へ、と調和をひろげる
第三十五則 : 家庭だけが場ではない。個人的な場、公共的な場
第三十六則 : 花の色だけでなく、器も、台も、壁も、光線も
第三十七則 : 眺める人の位置で仕上げる
第三十八則 : 花台、敷板、敷砂、敷石、置き合わせなど
第三十九則 : 環境から生まれたように
第四十則 : 祝儀の花。名花、常磐木、紅白、金銀、実ものなど
第四十一則 : 水をきらしても風にあてるな
第四十二則 : 萎れた花は、水切りでもどして使う
第四十三則 : 基本水あげ法.水切り、湯あげ、焼く、塩酢、ポンプ式
第四十四則 : 重複がないかを見る、強調があるかを見る
第四十五則 : 花が主なら、器が従。器が主なら、花が従
第四十六則 : 見ばえしないいけばな。疎密、強弱のないいけばな
第四十七則 : 花を、器を、場所を、探す努力
第四十八則 : 意外ないけ方がある。意外な題材を忘れている
第四十九則 : 新、動、均、和、の四原則。線、色、魂、の三拍子
第五十則 : 見る目と、造る手と、片寄らぬ精神

ブランドオフィシャルリリーステキストから分かるようにALMOSTBLACKブランドはアートコラボレーションに対して他ブランドと異なる表現をします。
一般的にはアーティストやクリエーターの作品のみを服上にプリントする、刺繍する、etc。つまり、あくまで服の上に視覚的な作品のみを取り付ける方法論をとります。ALMOSTBLACKは視覚的なプリントも用いますが、一人のアーティストを深く掘り下げ、アーティストの考え方やメッセージ、そして作品が持つ特徴や方向性、そして世界観。つまりは視覚化出来ない部分を、服上でデザインやディテール、カラーパレットなどで表現しようとしている事が、世の中に溢れている一般的なコラボレーションとの差です。

ARTとFASHIONの本当の意味での融合を目指しています。